ヴェイラー
ヴェイラーは、ノトサウルス大陸で生まれた存在ではない。 もともとは、ある程度の意識を宿しただけの単なる粘液状の生き物に過ぎず、異界の裂け目を漂う存在だった。ある時、古の遺跡「ストーンヘンジ」に生じた時空の歪みへと迷い込み、引き裂かれた空間の先で、自由と野性に満ちた幻想世界――ノトサウルス大陸へと放り出されたのだ。
ヴェイラーがその形態を安定させるには、宿主が不可欠だった。 これまで多くの生物に寄生を試みたが、誰もがその異質な侵入にパニックを起こした。内側から「完全に占有される」感覚は宿主に根源的な恐怖を抱かせ、激しい拒絶反応を引き起こした。彼らは狂ったように暴れてヴェイラーを追い出そうとし、そのたびに粘液は引き裂かれ、焼かれ、無理やり剥がされる――。そんな絶望的な拒絶の繰り返しだった。
そのため、ヴェイラーは相手が耐えきれなくなる前に、自ら離れることに決めた。
そうして放浪の果てにたどり着いたのが、ブルック草原だった。静寂に包まれたその場所には、ヴェイラーが好む、見知らぬけれどどこか懐かしい匂いが漂っていた。そして、そこに赤兎がいた。
彼は、他の生物のように共生を拒まなかった。 ヴェイラーが恐る恐る近づき、呼吸に溶け込み、脈動を伝ってその粘りつく身体を滑り込ませたときも、赤兎はわずかに身をこわばらせただけで、その蹂躙を受け入れたのだ。
だが、共生は最初から順調だったわけではない。 時折、赤兎は言葉にできない違和感に襲われ、呼吸を乱した。内側から未知の質量で満たされ、内壁をじわじわと押し広げられる感覚。あまりに強烈で生々しいその充足感に、彼は足を止め、低く艶めいた喘ぎ声を漏らすことしかできなかった。
ヴェイラーはそれを察知し、離れようとした。 粘液がゆっくりと赤兎の体内から引き抜かれていく。だがそのとき、ヴェイラーは初めて「離れたくない」という熱い執着を覚えた。そして赤兎もまた、熱が去っていく空洞に、耐え難い喪失感を感じていた。まるで、その身体がヴェイラーという重みに暴かれる悦びに染まりきってしまったかのように。ヴェイラーはその欠落を感じ取り、赤兎の渇望をすべて満たすべく、持てる全精力を注ぎ込む決意をした。
ヴェイラーは再び侵入した。今度は、もう遠慮などしなかった。
黒い粘液は猛烈な勢いで拡散し、赤兎の肉体の隅々までを支配した。自らの意志を赤兎の神経、血管、その構造のすべてに深く刻み込んでいく。そして、ヴェイラーが赤兎の体内で「一番感じているところ」を逃さず捉え、執拗に突き上げた瞬間、彼はたまらず崩れ落ちるように膝をついた。地面を強く掴み、乱れ狂う呼吸を必死に整えようとするが、ヴェイラーは容赦なく内部を侵食し続ける。まるで限界を試すように、あるいはその存在を芯から汚し尽くすように、熱い粘液を蔓延させていった。
ついに、共生は完了した。 かつて威風堂々としていた赤兎は、完全に異形の怪物へと堕ちた。ヴェイラーによる絶え間ない内側からの刺激は続いており、赤兎の股間にそそり立つ巨柱からは、情欲を孕んだ黒い粘液が絶えず滴り落ちている。赤兎は両目を赤く潤ませ、荒い吐息を漏らしながら、次の獲物を求めてブルック草原を彷徨い始めた。
これが初めてだった―― 共生が、単なる「仮宿」で終わらなかったのは。